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いよいよ浅井課長のプライベートルームに潜入するべく靴を脱ぐ。
今度はまるで、潜入捜査官の気分。
もしも見てはいけないものを見たとしても、黙っていればいい。週末婚を3ヶ月間継続させたら、この任務は終了だ。
「行きます……えいっ」
一人、気合を入れて開けたドアはリビングの扉だった。ただ。
「ひっろっ!」
右手にキッチン、その向こうにはダイニングセット 、反対側には、まさか本革ではないだろうけれど黒の大きなソファーがあって、その前にはテーブル、壁際に置かれたテレビなんか、うちのよりずっと大きい。
全体に物が少ないし、私の部屋とは随分違って落ち着いた雰囲気だ。
「なにこれ?」
三十代前半の独身男性とは、こんなにも優雅に暮らしているのか。だって、私が借りている部屋の二倍以上はあると思う。いや、三倍?
ぽっかり口を開けてキョロキョロしながら進んでいけば、自分の立っていた壁の向こうにも部屋があったのだと気がついた。
自然とそこに目がいく。
「でっかっ!」
うちのベッドの二倍はありそうな大きなそれを前に、思わず想像しかけたあれこれを大慌てで掻き消した。
他はきっちり閉められていたにも関わらず、ベッドルームだけドアが開けっ放しになっているのはなんでだろう。引き戸だから開け放しているのだろうか。
そこまで見て、気づく。
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