黒いバナナ

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 □    なんであんなこと言っちゃったんだろう。そう思うのと同時に湧き上がる、焦り。  けど焦るのも仕方ないと思う。いつものメンバー四人中三人が既婚者となってしまったら、独身は私一人だけ。なんだか、自分だけ異世界に放り出されることが決定したのを宣告されたような、途方も無い不安に襲われる感じ。  実際、届いた招待状を目にして感じたのは、めちゃくちゃな焦りと、なんとも言えない寂しさだった。  思い出しただけでちょっと泣きそうになって、激しい焦燥感を自力で宥めることなんてできなくて。  落ち着いていられるわけない。  あの日の会話を思い出しながら、ブラックコーヒーをビールのように煽った。 「なんで二人同時に結婚なんかするのよぉ。もう、どうすればいいのぉ?」  そう呟けば、向かいの席で苦笑する美保に宥められた。先日の鬱憤を一人で抱えきれず、仕事終わりのこの時間をいただいたのだ。 「まあ、それは仕方ないとして。でも、あんなの本気で言ったわけじゃないよねえ?」 「ん〜。どうしよ……誕生日まであと四ヶ月ない」 「え、本気なの? 無理だよそんなの」 「無理とか言わないでよお……誰かいない?」 「ええー……ごめん、いない」 「だよねえ。どうしよ、ほんと」 「煽られたからって焦ってするものじゃないって。縁だから、そういうのは」  そう言う美保はとっくに結婚していて、人妻。学生時代からの恋人と、社会人になって割とすぐ結婚した。子供はまだいないから、仕事帰りに女二人でお茶したりもたまにはできる。同じ社内にいても接点のある仕事ではないから、こうして時々つき合ってもらうのは私の楽しみなんだけれど、そんな美保も妊活中で、子供ができれば私と会う時間なんて無くなるのは必然で。  独身ならではのこういう気楽さを手放すのは勿体無いような気もするし、今日は旦那が……、なんて一度は言ってみたい気もするし。  結婚って、なんなんだろう。正直なところ、ピンと来ない。
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