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「あっ!」
派手な音を立てて床に衝突したお皿が砕けて、足元に散らばった。その音で我に返って、布巾を置いて慌ててしゃがみ込む。
間違いなく、こういうおっちょこちょいなところも欠点。
早く、早く片付けなきゃ!
「ああ、大丈夫か? 俺がやるからちょっと待ってろ」
そう言われても、待ってなんかいられない。だって私は、何もできない。だから誰からも選ばれなかったんだもの。
何に対してか焦りながら、黙ってカケラを拾い、手のひらの上に集めていく。
洗い物で濡れた手を拭いた恭介さんがしゃがみ込んで、カケラの散らばった床に影ができた。
「ひなた、どうした? そんなに慌てなくても、皿なんていくらでもあるんだから平気だぞ? 怪我したらいけないし」
すぐ近くから聞こえた宥めるような声にハッとして、カケラを摘んでいた指に変な力が入って落としてしまった。
「っ……」
「ほら、危ない」
恭介さんは私の左手に載せられたカケラをそっと床に戻すと、載せる物のなくなった手を大きな両手で包み込んで、完成品の検査でもするようにじっと見つめた。
「こっちは大丈夫」
そう言うと、今度は右手を開いて確かめる。
「あ、血が出てる」
人差し指の先に、ぷっくりと血が浮かんでいる。別に、痛いというほどでもないような傷だ。
その人差し指が突然、上の方に持っていかれた。
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