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しかしこのソファー、寝心地も良かったが座り心地も良い。背中と頭を預けたこの状態であと少し力を抜けば、すぐにも眠れそうだ。
欲しいな。うちに置いたら居場所がなくなっちゃうけど。なんて考えているところ、やっぱり私は脳天気だ。
そうやって少しの間目を閉じていたら、恭介さんの近づいてくる気配がした。
「お疲れのお嬢様に紅茶をお持ち致しました」
「え、執事?」
「紅茶といえば執事だと思ったんだが」
冗談なのか本気なのか。いや、冗談だよね?
そんな事を言いながら、ソファーの前のテーブルにことりとカップを置いている。
さすがに本物のお嬢様が使いそうなカップではなかったけれど、職場での、上司としての恭介さんしか知らない私は十分戸惑った。こういう冗談を言う人だとは思わなくて。
でも、戸惑った理由はそれだけじゃない。
さっき食事をしている時から、気にはなっていた。
いつの間にかネクタイは抜き取られていて、襟元のボタンも開いている。シャツの袖だって捲られているせいで、肘の下辺りまで腕が見えてしまっている。大きな手に引き締まった手首、そこから肘に向かっての筋肉の付き方が綺麗で、妙に男っぽいのが強調されているのだ。
普段見えないものが見え隠れするというのはどうも……。彼氏いない歴一年になるせいか、ドキッとせずにいられない。
執事の装いとは違うけれど。
執事でなく、上司だけれど。
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