黒いバナナ

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「うーん……ないのかな、縁」 「そんなことないでしょ。とにかく焦る必要なんてないと思うよ? 結婚なんてしてもしなくても自由だもん」  美保はこうやって寄り添って、認めてくれる。彼氏もいないくせに、あと数ヶ月で結婚してやるだなんて無鉄砲なことを言うような私にも、優しい。  だからこそ美保には、心の底にある正直なところまで話せてしまうのだ。 「本当はさ、すっごい焦ってつい勢いで言っちゃったんだよね。だって二人同時に結婚するとか、そんなの予想もしてなかったし、彼氏もいないし、仕事だってめちゃくちゃできるわけじゃないしさ。元彼に、なんか違うって言われて別れたこと思い出したらまた凹んじゃって。美保が妊活してて、子供ができたらこうやって会えなくなるんだろうなとか考えたら寂しいし。このまま彼氏もできなくて気づいたら孤独死とか?」  もう思考がおかしい。取り柄の元気と能天気パワーは鳴りを潜めてしまい、良くない方向へしか考えられない残念なスパイラルに陥っている。生理前、だったかな? 「いや、孤独死はちょっと大袈裟じゃない? その前にどうにかなるでしょ」  親友とて、既婚者なのだ。相手を探すところから始めなくてはならない私の気持ちはわかるまい。 「美保はさ、もう結婚してんだもん。だからそんなこと言えるんだよ」 「まあ……うん……」  あ、黙らせてしまった。美保が既婚者なのと私が結婚できないのは、何の関係もないのに。 「……でも、実際結婚のピークは二十七歳くらいなんでしょ? 私知らなかったよ。三十過ぎて考えてもいいくらいだと思ってた。晩婚って、誰が言ってるんだろうね?」 「うーん、人それぞれなんだろうけど……三十過ぎてから相手を探し始めるのは、いろいろ大変そうな気もする」 「なんで?」 「だって、段々怖くなりそうじゃない?」 「怖く?」 「フラれるのも、溺れるのも。振り向いてもらえないのに思い続けるのも辛いだろうし、だからっていい人が現れるのをいつまでも待てないだろうし。もちろん、結婚なんてしなくても恋人がいればそれでいいって言うなら別だろうけど」 「……そうかも。どうしよ、私」
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