夫婦ごっこ

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「だって私、何も出来ないんです。それなのに三ヶ月も、たとえ週末だけでもこんなことしてたら、本当に迷惑かけるだけで申し訳なさすぎるし」 「そんなの、今更だろう」  言われて思い起こす。  確かにそうだ。  離婚を前提に結婚してくれと迫った時点で、とんでもない迷惑をかけている。だから本当に今更すぎるのは百も承知なんだけれど、せめて、そんな無茶を聞いてくれた上司に恩返ししたい、と思うのは間違いなんだろうか。 「でも……やっぱりお願いします! 週末だけ、私をこき使ってください! それで私を、使える女にしてください!」 「使える女って……」  恭介さんは呆れたような顔でこっちを見ている。  もっと真剣に頼まなきゃダメだ、とソファーの上で恭介さんに向かって正座をし、両手をついた。 「お願いします! 石森ひなた、一生のお願いです!」  真剣さが伝われば、何とかなる。  誰に言われたか、何かの歌だったか。  そんなの忘れたけれど、とにかく必死の思いを込めて恭介さんの目に訴えかけ、ガバッと頭を下げた。 「ああ、わかった、わかったからそんなことするな」 「ほんとですか?!」  パッと、明るくなった気持ちで顔を上げる。 「ただ、俺だって何でもできるわけじゃないから、あまり期待されても困る」 「でも、私より出来ます!」 「ふははっ。それ、張り切って言うところじゃないだろ」  声をあげて笑う恭介さんにつられて、私も思わず笑ってしまった。  何だか楽しいな。  いつも一人だから、誰かと過ごす時間が新鮮なのかもしれない。
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