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飲み終えた紅茶とコーヒーのカップは、私が片付けた。
いくらなんでもそれくらいは出来ますと主張すれば、恭介さんは、ポンと私の頭に手を乗せて、バスルームへ消えた。
夫婦らしくあるためにするんだろうそういう仕草に慣れていないから、必要以上にドキドキする。
恭介さんがキッチン脇のドアを閉めたのを確かめて、大きく深呼吸した。
カップの片付けなんてすぐだ。だからゆっくり丁寧に洗ったのだけれど、やっぱりすぐに終わってしまった。
それでさっきのようにソファーに座っているのだけれど、妙に落ち着かない。
契約では週末の金、土に、私がこの部屋に泊まることになっている。だからお泊りセットは持参した。
でも、いいのだろうか。本当に泊まってしまって。
今頃になって、事の重大さに気づいたというか。
いくら私がソファーで寝るとしても、私たちの本当の関係は上司と部下。それなのに同じ場所に寝泊まりするなんて。でも、公には夫婦だし。
ここに来た時は眠りこけるほど図々しかった神経も何処へやら、今はじっと座って肘掛けに頬杖をつくしかできないでいる。
いくら酔っていたとは言え、何であの時、恭介さんに向かって結婚してくれなんて言ったのか。
上司に向かってそんなことを言う自分の神経が、自分でもわからない。それを承知してくれた恭介さんの気持ちは、もっとわからないけれど。
きっと、こういうところも全部ダメなところだ。だけどもう、始まってしまったんだ。さすがに一週間で離婚じゃ目も当てられない。だからやっぱり三ヶ月、無事に乗り切るしかないんだけど。
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