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浅井課長って、あんなにカッコよかったっけ?
そう思いながらも、たっぷりのお湯に浸かっていたら、ここが上司の家だなんて忘れてしまいそうだった。このマンションの方が、自分のアパートの何倍も居心地がいいから。
当然といえば当然だ。安アパートとここじゃ、そもそもの家賃も設備も、比べる方がおかしいレベルだし。一人で住むのは勿体無いくらいなスペースを一人で占有しているなんて、独身貴族の優雅さったらない。
なぜかその恩恵に預かっている。
それが不思議な気もしたけれど、こんなにゆったりお湯に浸かれる現実が幸せすぎた。
実家に暮らしていた頃は当たり前だったお風呂も、一人暮らしとなった途端、当たり前ではなくなった。ずっとシャワーだけ、ということもさすがにないけれど、毎日お湯を張って掃除して、と考えたら自然と回数は減ってしまったから。
他人の家でこんなに寛げる自分が怖いような、別にそうでもないような。順応性がある、ってことかもしれないし。
妙にポジティブな思考も、自分としては嫌いじゃない。
お風呂を出たら後は寝るだけだ。さっき、使える女にしてくださいと頼んだから、きっと明日は色々とやらされるんだろう。やらされる、なんて言い方はいけないか、自分で頼んだんだから。
そんなことを考えつつ、鼻歌でも歌い出しそうにリラックスした状態でお風呂を出て、パジャマ姿でリビングへ戻る。
「あ〜いいお湯でしたぁ〜」
ソファーに掛けた恭介さんが振り返り、「腰に手を当ててコーヒー牛乳でも飲みそうだな」と呟いた。
実際コーヒー牛乳があったら、喜んでそうしたい気分だ。それになんだか、ぐっすり眠れそうな気がしてきた。久しぶりに浸かった湯船が気持ちよすぎたからだろう。
けど待って。
恭介さんが起きている間、そのソファーを使っている間は、私も起きていなきゃならないってことだよね?
まあいっか。とりあえずお水でももらって、恭介さんがベッドに行ってくれるのを待っていれば。
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