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パニックでガッチガチに緊張しているわりにいろんなことを考えていたら、あっという間にベッドに降ろされた。
リビングのすぐ隣、引き戸は開け放たれたままだったから、いくら広い部屋だと言っても長い足で歩けば数歩。
近すぎ!
やっぱり、一線超えてしれっとしていられる自信なんてない。だから恭介さんを見上げて必死に言い募る。
「浅井課長! ちょっとこれは、さすがにいくらなんでもっ、私たち、偽の夫婦ですし、上司と部下ですし!」
だってだって、職場で毎日顔を合わせなきゃならないし。
降ろされたままの形で手だけ動かして胸の前でクロスさせ、ぎゅっと自分の腕をつかんだ。
彼女はいないと言っていたから、丁度いいと思われたのかもしれない。それにこの結婚は私が無理やり言い出したんだ。契約期間中は恋人を作らないという取り決めは、もしかしたらそういう意味だったのか。
困った。
ああでも、もしもこのまま体を求められても、嘘だとバラすなんて脅されたら拒みきれない。
どうしよう!
石森ひなた、大ピンチ!
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