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昼休みが終わり、会議資料を抱えて廊下を歩いていると、後ろから川村君に声をかけられた。
「石森さーん、何か手伝いますかあ?」
ちょっと小走りに駆け寄ってくる川村君。私より二つ下の彼は気さくでいい人だけれど、こんな事を言われたのは初めてだ。
時間も全然迫ってないし、なんならいつも一人でやってるよ?
「あ、川村君。ありがとう、今のところ大丈夫そうだよ? 資料置いて、コーヒー準備するだけだしね」
「そうっすか? 資料はともかく、コーヒーなんて大変じゃないですか?」
「うん、まあ。でも部長喜んでくれるし、他に大したことできないし」
「うーん、そうっすか? じゃあ、大変なときは俺に言ってくださいね」
「うん、ありがとう……でもどうしたの? 急にそんな」
「いや、石森さん結婚したんだし、子供とかできてたら体大変かなって……あ! これセクハラ? すみません、そういうつもりじゃなくて。姉が妊娠した時結構大変だったらしくて。だからほんと、遠慮せず言ってください!」
曇りのない笑顔でそう言われたら、真っ直ぐに川村君を見られなかった。
「あ、うん……ありがとう」
うう、なんか苦しいかも。
ごめんね川村君、子供はできないよ。
「なんでも手伝いますから。じゃあ」
「うん、ありがとう」
どうしよう、そういう目で見られるんだ。子供の心配までされちゃって、罪悪感半端ない。
職場結婚、結構大変だ……。
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