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「あ〜、人妻のひなたちゃんが淹れてくれるコーヒー、いいねえ。それだけで頑張れるわ」
すっかり吉永君の存在を忘れて物思いに耽っていた。
「あっそう。英子さんも人妻だけどね」
「おっと、確かにそうだ。でもやっぱりアラサー近辺が理想かな、俺的には」
「吉永君の理想なんて聞いてないよ」
まったくもってどうでもいい理想だ。
やっぱり噂は本当なのかも。こんなチャラ男なのにモテるのがどうにも不思議だけれど、まあ好みは人それぞれだからなんとも言えないが。
「ははっ。釣れない態度も人妻っぽくていいね。じゃあまた。充電サンキュ」
「はいはいどうも」
頭の上に乗っけられた手は、振り払う前にヒラヒラと離れていった。
どこがどうなれば人妻っぽいのか。吉永君の好みなんてほんとどうだっていい。
軽くてよく喋る人。背も高く顔もいいのだけれど、残念ながらチャラすぎる。それでも実際、吉永君が総務に出向けば女性たちの視線が相当集まると言うのだからわからない。
恭介さんとは大分違う人種だ。
だって恭介さんなら、たとえ休憩中だとしても、女性社員とこんな風にチャラチャラ話すことなんて絶対にしないだろうから。
無意識に比べてしまったのは、たとえ嘘だとしても恭介さんの妻になったから、なのかな。
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