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それから、金曜に、生管メンバーで結婚祝いのパーティー的なものを開いてくれること、英子さんや川村君にあれこれからかわれたことを話した。契約内容なんかもざっと説明させられて、恭介さんのマンションがカードキーであった事も話した。
美保はただ相槌を打って聞いてくれて、私は真相を打ち明けられたことで漸くホッとできた。
「で、週末婚なんだよね? ということはもう、お泊まりしたの?」
「え……」
そこはまだ、言っていなかった。
なんかね、言いづらくて。
だって、同じ部屋の同じベッドで眠ったらしかったのに、全く手出しされなかったとか、魅力ありませんと宣言するようなものじゃない?
結局は上司と部下でしかないから、手なんか出されても困るんだけど。
「体は要求されてないって言ってたけど、本当に何もなかったのぉ?」
美保にしては珍しく突っ込んでくるな。
「え、ないよ。美保ってそういう話好きだっけ?」
「好きってわけでもないけど、嫌いなわけでもないよ。ひなたのことだから気になるし。で? キスくらいしちゃったりとか?」
「それが……」
キスなんかされてない。それどころか、部下に手を出すつもりはないと、きっぱり言われたのだから。
「それがっ?」
「ごめん、全くない」
苦笑しながら告げれば、目の前の期待に満ちた表情が一転した。
「そうなの?」
「うん。なんか逆に情けないね」
「まあ、女としてちょっと複雑ではあるけど。でもすごいね、浅井課長。それって、真剣にひなたの力になってくれようとしてるってことじゃない?」
「そう、なのかな」
「だって、浅井課長にとって何のメリットもないんだよ?」
「まあ、そうだよね」
「よかったじゃない、それなら安心できるし。結婚生活の予行演習だと思って頑張ってみたら? そのうちいい出会いがあるかもしれないしね」
「うん。そうだね、そうする」
美保がそう言ってくれたから、やっと能天気モードが取り戻せそうだ。
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