▼純朴なキスを

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「ひなた、立てるか?」 「ん〜、恭介しゃん、連れてってくらしゃ〜い」  なんてことだ。シャンパン数杯でここまで酔うとは。  こんな状態で電車に乗せるわけにはいかない、と頭を抱えたところで、英子さんに背中を叩かれた。 「浅井君、タクシー呼んだから」 「ああ、ありがとうございます。さすが英子さん」 「ふふん、お母さんに任せなさい。でもごめんね、随分酔わせちゃったみたいで」  俺の胸に凭れてくったりした様は、脱力系のぬいぐるみのようだ。立たせても、多分頽れるのがオチだろう。 「私、荷物持ってってあげるから、浅井君は奥様を運んで」  言葉にしなくても考えがリンクしたようだ。実に頼りになる母だ。 「すみません」  苦笑いで申し訳ない旨を伝え、ひなたの体を少し持ち上げて、腕を自分の肩に回させる。  思っていたよりずっと細い腕だ。  そうしてから背中を支えて、立たせると言うより持ち上げるようにして担ぎ上げ、太腿の後ろ部分を片手で押さえた。  碌に力の入らない体は、しっかり支えなければいつ落ちるかというような不安定さで、片手はひなたの後頭部に回すしかない。  またもやヒューヒューと囃し立てられたが、この状態ではもうどうすることもできず、黙って、扉を開けてくれる英子さんに続いた。
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