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「ひなた、立てるか?」
「ん〜、恭介しゃん、連れてってくらしゃ〜い」
なんてことだ。シャンパン数杯でここまで酔うとは。
こんな状態で電車に乗せるわけにはいかない、と頭を抱えたところで、英子さんに背中を叩かれた。
「浅井君、タクシー呼んだから」
「ああ、ありがとうございます。さすが英子さん」
「ふふん、お母さんに任せなさい。でもごめんね、随分酔わせちゃったみたいで」
俺の胸に凭れてくったりした様は、脱力系のぬいぐるみのようだ。立たせても、多分頽れるのがオチだろう。
「私、荷物持ってってあげるから、浅井君は奥様を運んで」
言葉にしなくても考えがリンクしたようだ。実に頼りになる母だ。
「すみません」
苦笑いで申し訳ない旨を伝え、ひなたの体を少し持ち上げて、腕を自分の肩に回させる。
思っていたよりずっと細い腕だ。
そうしてから背中を支えて、立たせると言うより持ち上げるようにして担ぎ上げ、太腿の後ろ部分を片手で押さえた。
碌に力の入らない体は、しっかり支えなければいつ落ちるかというような不安定さで、片手はひなたの後頭部に回すしかない。
またもやヒューヒューと囃し立てられたが、この状態ではもうどうすることもできず、黙って、扉を開けてくれる英子さんに続いた。
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