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ドワーフ道具屋、本日も営業中
渇きと空腹で視界が霞む。
村を焼かれ、家族を失い……。
もう何日も、食べ物を口にしていない。日にちの感覚も、時間の感覚すら曖昧だった。
必死に逃げて来たけど、死神の足音はすぐそこまで迫っている。
お父さん、お母さんごめんなさい……。せっかく逃がしてくれたのに、僕はここで死んでしまうようです……。
「おや、どうした少年?」
足音と声が聞こえた。人の気配……。女の子の声……?
「……み、水を……」
精一杯絞り出した声は掠れ、風でも吹けば掻き消されてしまいそうなほど、小さかった。
「……また略奪か。人間も懲りないねぇ」
ため息交じりの声。
「生憎だが、アタシはもう人間は拾わないって決めたんだ。他を当たってくれ」
気配が踵を返す。
待って……。
残った力を全て使って手を伸ばす。倒れたまま、地面を這いずるように。
「……」
「水を……」
気配の主の足を掴み、懇願する。
「……なんでこんな子供にばっかり、出会っちまうのかねぇ……」
これが師匠との出会いの記憶。
幼い僕が必死に手を伸ばして、生を掴み取った瞬間の記憶。
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