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がちゃり。
鍵を差して回す。空ぶった感覚。あれ? と思いもう一度。今度はちゃんと、かちゃんという鍵の外れる音がした。うまくはまらなかったのだろうと結論付け、俺は半ば倒れこむようにして玄関から家の中に転がり込んだ。
落ち着くにおい。掃除なんかできるわけがないので多少埃っぽくはあるが、あまり気にならないのでいいことにした。このまま寝てしまいたいところだが、そうはいかない。せめてベッドに行って、服を脱いで、荷物を置いて。まだまだやるべきことは沢山ある。家につけばゴール、おしまい、ではないのだ。俺は独り暮らしなので、寝落ちてしまった時に起こしてくれるような人はいない。落ちてくる瞼を必死に開け、眠気と闘いながら二階にある寝室に向かう。
──プルルルル
電話の音が、する。これまでのように空耳などではなく、廊下の端に置いてある黒電話からの音のようだった。なんだよこんな時に、と舌打ちしながら電話に出る。「はいはい」投げやりに、相手に言葉を投げつけた。
不気味な沈黙。悪戯電話か何かだったのだろうかと、苛々しながら電話を叩きつけようとした、その時。
──任……開始。
今…り、殺……器を……投入、…ます……
ター………は、二階…廊下……と、100m……
え。
戸惑う間もなく、後ろからガチャン、何かを装填するような音が響く。振り返る。そこにいたのは、今日の仕事で使った殺人兵器だった。
俺たちの作る薬はよく効く。その材料は誰も知らない。材料調達も俺たちの仕事だった。先輩から教えてもらった、その薬の材料は、そう。確か。
……ある条件下にある人間の、血液と、骨──。
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