ガーベラの花束を君に

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「久しぶり」 「久しぶり」  中学を卒業し、6年ぶりに会うクラスメートは、みんな大人の顔をしていた。 「何してんの? 学生?」 「就活中ー」 「俺んとこの会社、マジブラックでさあー」  お酒を飲みながら交わされる話しの中身は、あるようでやっぱりない。同窓会なんて来る気はなかった。だけど、今日、会いたい人がいる。だから、私はここに来た。 「あの、山本くん。久しぶり……」 「岡本。久しぶり」 「元気?」 「それなりに」  そう返事をする彼の顔は、少し沈んで見える。 「あ、あのね……」 「山本ー!」  私達の会話に割り込むように、矢代くんがやってきた。 「久しぶり! 元気か?」 「まあ、それなりに」 「なんだ? あんま飲んでないな。もっと飲めよ」 「悪い、俺、下戸なんだ……」 「なんだ、デカい図体して情けねえなー」  そういう矢代くんも、あまり強いようには見えない。 「なあなあ、向こうで話してたんだけどさ。今頃だったよな、吉村の……」  その名前を聞いて、私の心臓は大きく跳ねた。 「せっかく集まったからさ、明日、みんなで墓参りに行こうって話しになったんだけど、山本も……」 「悪い。俺、明日は用があるから……」 「なんだよ、それ! お前の元カノだろ? 久しぶりに会ってやろうって、思わねえのか?」 「ちょっと、矢代くん……」 「矢代、お前飲み過ぎだ。悪いな山本」  山本くんに絡む矢代くんを、藤田くんが押さえてくれた。 「なあ山本。ずっと前に亡くなった元カノのことなんて忘れたかもしんねえけどさ……」 「ちょっと!」  思わず大きな声を上げてしまった。驚いた顔をして、矢代くんと藤田くんが私を見る。 「悪い。俺、もう帰るわ」  山本くんは、逃げるように帰っていった。 「山本って、あんなだっけ?」 「墓参りくらい行ってもいいよね? みんなもいるんだし」 「昔っから、ちょっと冷たかったよな」 「山本と心春、ほんとに付き合ってた?」 「どーだろーね。心春の片想いだったとか?」  吉村心春は、卒業直前に交通事故で亡くなったクラスメート。山本くんと付き合い始めたばかりで、同じ高校に進学するはずだった。 「もしかしてさ、付き合ってくれる奴なら、誰でも良かったのかもね」 「付き合ってた期間も短い間だったし、新しい彼女がすぐ出来て、心春のことも忘れてたんじゃ……」 「違う!」  私はたまらず叫んでいた。 「何? どうしたの?」 「違うの……山本くんは……」  涙があふれる。胸が詰まって言葉が出ない。
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