甘くて痛い

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甘くて痛い

 私たちカップルの朝は、「おはよう」から始まる。そう、普通のカップルと変わらない至って普通の朝。 「ほのちゃん、おはよ」  秋さんの声で、ぱちりと目が開く。片耳から外れたイヤホンを差し直して、寝ぼけた声を出す。あきさんのおはようの言葉は、イチゴミルクの飴みたいに甘い。 「あきさん、おはようございます」  パチパチと瞬きを何回も繰り返せば、ぼんやりとしていた天井がはっきりと見えてくる。スマホの画面に焦点を合わせて時間を確認すれば、7時半。いつもより少し遅めの時間。  ぼんりやりとした目に映った日付と曜日は、私の頭を混乱させる。 「あれ? あきさん今日は休み?」 「俺、今日はお昼から」 「ん? なのにこの時間に起きたの?」 「ほのちゃん、大学でしょ」  くすくすと耳元に聞こえる笑い声。お腹の奥がくすぐられるような、背中が痒くなるような感覚に体を震わせる。 「わたしのため?」 「うん、おはようは言いたかったからさ。大丈夫? 間に合う?」 「ん、だいじょーぶ」  ふわぁっとおっきいあくびをひとつ。 「あきさん、ありがとう」 「いえいえ、じゃあ俺はそろそろ寝るよ」  あきさんの言葉に、一瞬フリーズ。脳みそを無理矢理に動かして、弾き出された答えは…… 「もしかして、ずっと起きてたの?」 「バレちゃった」 「寝なよ! 仕事辛くない? 大丈夫?」 「最悪休みでもいっかなぁーって、溜まってるのないし」 「いやいや」 「自営業だからそこらへん楽なの」
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