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ボスッ、と音を立てて自分の体に何かが覆い被さった。
「あれ、ルドルフさん……?!なに、これ…、ひっ……、ルドルフさ、!
血、血が!血が出てるッ!止めないと、止めないと、止めないと…!!あ、ぁ、止まって、止まって、止まって……!!」
自分に覆い被さってきたのがルドルフさんの体だと気付くのにさほど時間はかからなかった。
彼の背に手を回すと、ベチョ、と、嫌な感触がして、自分の手を見ると、僕の手は真っ赤に染まっていた。
突然のことに驚きと恐怖で手が震えて、血が出ている場所を抑えようとしてもわからずに混乱してしまう。
レオンさんがエルフの治癒魔法は万能だと言っていた。
けれど、僕には魔法が分からない。
ルドルフさんも母も僕に魔法を教えてくれたことはなかった。
ルドルフさんの体の下からそっと抜けて、体勢を楽にさせる。
はっ、はっ、と過呼吸になる僕の耳にルドルフさんの弱弱しい声が微かだが聞こえてきた。
「ア、ル…フ…、逃げ、る…ん、じゃ。…リア、フォー、ド、が、来る…前、に…!」
「!…リアフォードって誰?そいつに襲われたの??ルドルフさん、ルドルフさん、しっかり、して!!!」
僕は声を震わせ、必死にルドルフさんの言葉を拾った。
「とに、かく…逃げ、なさい…。たの、む…。生きて、おくれ……。」
「…僕は、まだ16歳で、全然、一人じゃ生きていけませんッ…」
「だいじょう、ぶ、じゃ。そな、た、は、母に、よく、にとるし、のぉ」
「でも、でも、僕には、僕にはあなたが、ルドルフさんが、必要です、必要なんです、ッ!」
「ふぉ、ふぉ、そうか…ぁ。嬉し、の…ぉ。…でも、わしで、は…、もう、そなたを…、まも、って、あげられん…。―ゴホッ、ゴホッ……!…そ、ろ、そろ、ダメ、みたい、じゃな……。アル、フ…わしは、そなた、が…だいす――「話しが長いんだよ、この老いぼれが。」」
グサリと、ルドルフさんの背中に刀が突き刺さり、目の前に血飛沫が舞った。
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