4.勇者

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アルフレイドがリビングを出て行ったのを見送ってから、俺はルドルフと改めて話をした。 そして、ルドルフの正体を知り、アルフレイドをどうしようかと思っているのかも知った。 「アルフが、あなたに出会ったのも何かの縁じゃ。」 「ダメだ。」 「だから、危険だと言っとるじゃろ!!」 ルドルフは声を震わせ、怒鳴った。 「お前の考えには賛成できない。それでは、アイツが可哀想すぎる。お前と共にいる事こそが、今のアイツの幸せなんじゃないのか?お前に頭を撫でられた時、アイツが泣きそうな顔をしていたのを、お前だって気付いていただろう?たった一日の別れを、あんなにも苦しむ奴の元をお前は、去って行けるのか?」 「…………」 ルドルフの顔が、辛そうに歪んでいく。 「…お前が言った通り、アイツに出会ったのも何かの縁だ。…だから、また明日来る。必ず。」 「それが、こんなにも早く戻って来る気はなかったのだがな」 「美人を追い掛けて走る王子………。なんつって」 「こんな時にふざけてんじゃないわよ、この馬鹿!! レオン、ここの魔導士たちは私達が食い止めるから、早く小屋に!!!」 「頼んだ」 ミリアとファルコが、俺の道を塞ぐ魔導士たちを次々と倒し、俺は抜き身の剣を持ったまま、小屋へと駆けた。 表から入れば攻撃を仕掛けられる可能性が高いため、俺はあくまでも冷静になって、小屋の裏口から入り込んだ。 (無事でいろよ…。) すぅーっと深く息を吸い、右足を上げ、リビングへと続く扉を蹴り破った。 「うわーお。予想より早くて野蛮なトージョーっすね、様~!」 「全て、リュージンの処理が遅いのが悪いのだよ。…出来れば直接戦うのは避けたかったのだがね…。まさか、君の仲間に見られていたとは。誤算だったよ。」 紺色の軍服を纏った男二人の、片方のチャラそうな男の腕の中で震えているアルフレイド。 「ルドルフは、どうした。」 自分でも驚くほど冷たい声が出たが、気にしない。 「ルドルフ?あー、あのジィさんのこと?それなら殺したっすよ。アルフレイドちゃんの目の前で。ね、隊長。」 「リュージン、あまり煽るな。ほら、勇者殿がお怒りだ。……はぁ。まったく面倒くさいことになったね。リュージン、君はアルフレイド君を連れて先に戻っていなさい。ここは私が引き受けよう。」 「えぇっ、俺も戦いたいっす!……っていうのは冗談で、了解っす。そんじゃ!!」 「逃がすものか。」 緑眼の男が動くよりも前に、俺は窓から飛び降りようとするチャラ男の元へ行くと、その腕を強く引き戻した。 「おわっ?!ちょ、アルフレイドちゃん、ここで暴れたらいくら力弱くても落ちまうから、って、ああ、ちょっと!!」 アルフレイドが必死の抵抗をみせたことで、チャラ男の方に隙が生じ、俺は瞬時に距離を詰めて、アルフレイドを奪い返した。 「っ、……ん、……」 …身体が熱い。何か盛られたか…? 「アルフレイド。すまないが、あと少しだけ耐えてくれ。」 こくりと頷いたのを見てから、俺は前の二人へ向き直った。 先程までのどこか緩そうだった雰囲気も今はなく、どちらもこちらを強く睨みつけている。 そろそろ二人も外の魔導士達を倒し、こちらへやってくるだろう。 時間稼ぎ、するか。 「チッ。あのジィさんの魔力が弱まったからやっと見つけられたってのに、どうして勇者なんかが現れるんだよ。」 「勇者殿、我が帝国の方針は知っているだろう?今君が抱えているのは私等にとって大切な『材料』なのだよ。私等を邪魔する者は、排除しなきゃいけない。」 「だから、ルドルフも…殺したのか?」 「私はルドルフ(あれ)が、カンナ村にいたエルフの生き残りを匿ったから、それ相応の罰を与えてやったまでに過ぎない。私だって、なんの罪もない人間を殺すほど残虐な人間ではないのだよ。」 「裏切り者を殺して何が悪いんだよ。」 「帝国魔導士(帝国の犬)は、馬と鹿の区別もつかない奴なのか? と、……よかったな。今日は貴様等の片腕一つなくなるだけで済みそうだぞ。…………ミリア、ファルコ、今だ!!!!」 「「りょーかいっ!!」」 「?!?!まさかっ!!伏せろ、リュージンッ!!」 仲間たちの到着と共に響く爆発音。 黒煙に紛れて俺は駆け出し、小屋を出た。
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