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結局、昨日の夜はあのまま眠ることが出来ず、朝になってしまった。
その間もずっとレオンさんが傍に居てくれたが、逆に、まさか同じベットで一緒に寝るなんて思っていなくて、恥ずかしさと緊張が色々凄くて、眠ることは出来なかった。
ちなみに、レオンさんの方はすぐに眠っていた。
それで、今朝。
まだ眠っているレオンさんを起こさないように部屋を出ていくと、ついこの間も見た獣人の女性が、優雅に尻尾を揺らしながらこちらに歩いて来ていた。
「昨日はよく眠れた…って感じではなさそうね。髪の艶が足りてないもの。」
と、言って現れた女性は、どうやらレオンさんの仲間らしく、とても元気な人だった。
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。ゴッホン。
私の名前はミリア。レオンと一緒に旅をしている者よ。
ちなみに、みんなよく私のことをライオンとかいうけど、私はちゃんと猫よ!猫の獣人なんだから!!」
最初はおしとやかな自己紹介だったのに、最後に近付くにつれて語気が荒くなっていくミリアさんに、僕は思わずクスリと笑ってしまった。
「…っと、僕もしなきゃですね。…アルフレイドと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
ピっと背筋を伸ばし、踵と踵をくっつけて、綺麗な所作で挨拶をする。
前世で何度もやっていたせいか、今世になってもそれだけは変わらず出来た。
「うぉ、なんだなんだ?社交会の練習でもしてんのか??」
そんな僕等の元に、こちらも見たことのあった男性の獣人さんが近付いてきた。
「よぉ、何度見てもお綺麗なツラしてんね。でも、ここではそれも危ねえから、とりあえず、これかぶっとけよ?」
男性はそう言って、僕の頭にタオルをかぶせた。
「おはよう、ファルコン。貴方も自己紹介したら?」
「ああ、確かにな。んじゃ、青年。一度しか言わねぇからよく聞けよ~?
俺の名前はファルコン。ミリアやレオンと一緒に世界巡って旅してる。
見ての通り熊だぜ。」
キラっと効果音が付きそうなほどサムズアップをしながら白い牙を見せて笑うファルコンさんに、僕はまたクスクスと笑った。
獣人なんて初めて見る異種族なのに、この二人と一緒にいるのは笑いが絶えなくて、楽しい。
僕はこの時再び、ルドルフさんと出会った時と同じような暖かさを、二人からもらったのだった。
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