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40過ぎの事務経験のない女を正社員で取ってくれた社長が、更にはケルベロススタッフのチーフにつけてくれたのは、普通なら考えられない抜擢だ。いくら私がバンギャ30年選手だからって、バンドスタッフもやったことがなかったのに。
「そんなこと言ったら、雄貴さんだってそうですよ。誰にも手綱を渡さないで42年でしょ」
ケルベロスが結成された時から今まで、一貫してリーダーは雄貴さんだ。事務所に任せればいいマネジメントを、ずっと自分でやってる。この人こそ、一人で抱え込んじゃう人なんだ。
「やべ、痛いとこつかれたわ」
雄貴さんはそう言って笑う。
「俺ら似てるなぁ」
「ですかね」
そうかもしれないな。私も雄貴さんも、頼るとか甘えるとか、そういうやり方を知らない。
だから、雄貴さんは私に仕事を頼みやすいのかもね。似てるから。そう感じてくれてるなら、嬉しい。
「そんでも、いいだろ? 一日くらいどうにでもなるて。休みもあるんだしよ」
「まぁ……そうですけど」
考えてみたら、別に私に休みがないわけじゃない。ちゃんと普段は週休二日はもらってる。
ああ、やだなぁ。忙しいとそんなことも忘れちゃう。
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