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「例の事件の真相がわかった。来てくれ」
休日明けの出勤、だるさが残る腕で取った電話にすぐに立ち上がる。
電話の主がいる電務省は警察庁の隣の建物で、ゆっくり歩いても5分もかからない。
入口でパスをかざし、正面横のエレベーターに乗る。
行き先を念じるとエレベーターは上昇をはじめた。
足裏に重さを感じたのは一瞬で、ふわっと身体が浮き目的の階に着いた。
「早かったな」
電子構造部長と書かれたプレートの置いてある机に、電話の主が座っていた。
「例の事件のということでしたので」
「座ってくれ」と机の前にあるソファに促される。
かつての上司であるタキザワ──が腕を組んだまま、試すように聞いてきた。
「『大転回』は知っているよな?」
「もちろん。ですが、伝説と何の関係が?」
大転回。
1万年前に地球で大災害が発生し、生物は死滅した。
大災害の発生を事前に知っていた私たちの祖先である人類──今の言葉で言えば「物理人」は、その肉体を捨て電子の世界へ避難した。
以来人類は電子データである「電子人」として生存し、電子の世界の中で以前と変わらないような生活を続けている。
しかし、大災害から1万年後に再び災厄が訪れ、その災厄を逃れるためには「大転回」と言われる行動を人類が行う必要があるという神話が言い伝えられてきたが、これが何なのかわかっていない。
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