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色男の苦悩
「ありがとうございました」
「いえいえ、あなたも大変でしたね。元カノさんですか?」
「はい。俺の浮気が原因なんです。それで、亡くなってからも俺に付きまとう様になって……」
「そうですか……反省なさっているようなので、その気持ちを大切にしてください」
「はい、ありがとうございます。これで心置き無く成仏出来ます」
ハンサムな男性はニッコリ笑って言った後、フッと姿を消した。
「南無……」
師匠と新人は目を閉じて合掌した。
「ありがとうございました、また宜しくお願いします」
不動産屋の支店長は、師匠と新人の2人に礼を言った後、御布施を師匠へ渡し、店へ戻った。
「プライドの高い地縛霊を無理に追い出そうとしてはダメです」
「勉強になりました」
「色んなタイプの霊がいますから……。まあ、経験ですよね」
「精進します。……浮気に腹を立てた彼女が彼氏を殺して無理心中ですか……。前も同じ様な除霊ありましたよね?」
「地縛霊は恋愛のもつれによるものがほとんどですから……」
「色男も大変ですよね。殺された後もストーカーされるなんて……」
「あなたも気を付けてください。他人事じゃ無いですよ、若いのですから」
「私はそんなにモテませんから大丈夫です」
「それはそれで問題ですけどね……」
「まあ、修行中の身ですので……。それより、次の現場は何の除霊ですか?」
「あなたの想像通りですよ」
「またですか……」
新人はため息混じりに呟きながら、早足の師匠を追い掛けた。
完
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