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夜の学校は、もう二十三時を回ったというのに、真昼のバザーのようににぎわっている。
お面。わたあめ。りんごあめ。
それから、ヨーヨーつり。
向こうには、魔法使いか手品師みたいな人がいて、子供たちが笑い声を上げている。
あっちには風船屋さんまで来ていて、グラウンドは楽しい雰囲気でいっぱい。
これはルナが予想していたのと、全く違った。
〈弟子取り会場〉なんていうからには、もっと静かで、お固い試験会場のようなものを想像していたから。
けれどここには、大人もいれば小学生より小さな子供もいて、どの人が付き添い人で、どの人が志願者なのかルナにはさっぱり。
もしかすると、ほとんどの人が見物に来ただけかもしれない。
とにかく、みんなみんな楽しそう。
なかでもルナが驚いたのは、深夜にもかかわらず体育館で吹奏楽の演奏が行われていたこと。グラウンドのはしっこにまで、お上品なメロディーが流れてくる。
ご近所の迷惑は大丈夫だろうかと、ついつい、そんな心配をしてしまった。
(見学っていうから、社会科見学のようなものだと思ってた……)
言われなくても準備した筆記用具とノート。
それから水筒の入ったリュックサックを背負ったまま、ルナはどこか居場所のないような気持ちで立っていた。
「ルナ! やっと来た!」
聞き慣れた声が駆けてくる。ルナの姿を見つけた、〈委員ちょ〉だ。
委員ちょは、学級委員をしてくれている女の子。同じクラスになる前から他の子たちに「委員ちょ」と呼ばれているのをルナは何度も聞いたことがある。もっとも、委員ちょはなかよしからは下の名前で呼ばれているけれど、ルナは委員ちょとはまだ、そこまでのお友達になれていない。
「みんなとっくに集まってるよ! 来ないのかと思っちゃった!」
どうりで行きがけに誰とも会わないはずだ、と、ルナはひとりで納得した。
「早く先生に知らせなきゃ!」
委員ちょは、ルナの手を取って暗い校舎へ向かう。
明るいグラウンドを通らず、わざわざこの道を行くのは、人や露店のごちゃごちゃを通るより早く先生の所へ着けるからだ。
急ぐ委員ちょに精いっぱいの早さで足を動かしながら、ルナはまだ、来る時に味わった幻想的な世界に浸っていた。この月夜に漂
う素敵な音楽の仕業かもしれない。
「この音楽、すごいね」
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