第2話 満月の夜12時の決断

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 夜の学校は、もう二十三時を回ったというのに、真昼のバザーのようににぎわっている。  お面。わたあめ。りんごあめ。  それから、ヨーヨーつり。  向こうには、魔法使いか手品師(てじなし)みたいな人がいて、子供たちが笑い声を上げている。  あっちには風船屋(ふうせんや)さんまで来ていて、グラウンドは楽しい雰囲気でいっぱい。  これはルナが予想していたのと、全く違った。  〈弟子取り会場〉なんていうからには、もっと静かで、お固い試験会場のようなものを想像していたから。  けれどここには、大人もいれば小学生より小さな子供もいて、どの人が付き()い人で、どの人が志願者なのかルナにはさっぱり。  もしかすると、ほとんどの人が見物に来ただけかもしれない。  とにかく、みんなみんな楽しそう。  なかでもルナが驚いたのは、深夜にもかかわらず体育館で吹奏楽(すいそうがく)の演奏が行われていたこと。グラウンドのはしっこにまで、お上品なメロディーが流れてくる。  ご近所の迷惑は大丈夫だろうかと、ついつい、そんな心配をしてしまった。 (見学っていうから、社会科見学のようなものだと思ってた……)  言われなくても準備した筆記用具とノート。  それから水筒の入ったリュックサックを背負ったまま、ルナはどこか居場所のないような気持ちで立っていた。 「ルナ! やっと来た!」  聞き慣れた声が()けてくる。ルナの姿を見つけた、〈委員ちょ〉だ。  委員ちょは、学級委員をしてくれている女の子。同じクラスになる前から他の子たちに「委員ちょ」と呼ばれているのをルナは何度も聞いたことがある。もっとも、委員ちょはなかよしからは下の名前で呼ばれているけれど、ルナは委員ちょとはまだ、そこまでのお友達になれていない。 「みんなとっくに集まってるよ! 来ないのかと思っちゃった!」  どうりで行きがけに誰とも会わないはずだ、と、ルナはひとりで納得した。 「早く先生に知らせなきゃ!」  委員ちょは、ルナの手を取って暗い校舎へ向かう。  明るいグラウンドを通らず、わざわざこの道を行くのは、人や露店(ろてん)のごちゃごちゃを通るより早く先生の所へ着けるからだ。  急ぐ委員ちょに精いっぱいの早さで足を動かしながら、ルナはまだ、来る時に味わった幻想的な世界に(ひた)っていた。この月夜に(ただよ) う素敵な音楽の仕業(しわざ)かもしれない。   「この音楽、すごいね」
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