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委員ちょは、急いでるのに的外れなことを言い出すルナに一瞬きょとんとする。けれど、さすがはしっかり者。すぐに立て直して、真面目にこの音楽について答えた。
「この音楽はね、舞踏会なんだよ。ルイ・マックールはこっそり舞踏会に行くからって、元吹奏楽部の大人が張り切って始めたんだ。うちのパパもその一人。まったく、大人ってタンジュンよね! あんなのただのウワサなのに!」
「本格的だあ……!」
「会場は体育館だけどね。社交ダンス愛好会の人たちが、初めての人にもカンタンなのを教えてくれてるんだよ。うちのクラスも何人か踊ってる」
「わあ! それはびっくりだね!」
「びっくりはこっちだよ! 早い人は十九時から来て楽しんでるよ。それに……」
委員ちょは歩く速さをゆるめ、ルナのことを振り返って見た。
「せっかくのキレイな色の髪の毛、おろさなかったの?」
ルナは無意識に、左右の長い三つ編みをきゅっと握った。
ルナの髪の毛は、光り輝くお月さまと同じ色をしている――。
だから毎日、こうして三つ編みにして目立たないようにしている。ルナはあわてて、近くに声の大きい人はいないか探した。
みんなはルナの髪の毛を「光り輝くように美しい」なんて大げさにほめる。
けれどルナは、それがあんまり嬉しくない。
たとえば、みんなに囲まれるキラキラした女の子。
そういうのに憧れる気持ちはあるけれど、それと、実際に自分がそうなるのとは、ルナにとっては別の話。
どういう顔をしていたらいいのか。
なんて言ったらいいのか。
わからなくなってしまう。
今だって、せっかく、委員ちょが髪の色がきれいだ、って言ってくれたのに、やっぱり、何の反応もできなかった。
「服もいつも通りだし、もしかしてルナはルイ・マックールの弟子に立候補しないつもりなの?」
委員ちょは、ルナの格好をじっくり眺めて首をかしげた。言われてみて、ルナも同じように委員ちょを上から下まで眺めてみる。
(あ……!)
校門からの抜け道はうす暗くて、ルナは今まで気が付かなかった。
委員ちょは、いつもよりずっと、おめかししている。
「かわいいね」
「ありがと。――こっち!」
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