プロローグ

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プロローグ

「ミキちゃーん」 ぶんぶんと馬鹿みたいに手を振って来る女を見て私はため息をついた。 気づかなかったことにしてさっさとこの場を去ろう。 私は早歩きで進む。 「ミキちゃーん、おーい、ミキちゃんってばぁ。ねぇ、聞こえないの?おーい」 聞こえているよ。 聞こえているから人目のある大学内で馬鹿みたいに大声で叫ばないでくれる。 マヤ 幼稚園からの付き合い。彼女は所謂、お金持ちのお嬢様で自分の思い通りにならないことはないと本気で思っている馬鹿女 男女関係なく彼女にみんなが媚を売った。 だってマヤは馬鹿だから。カモにするには良い相手だもん。 お財布扱いされていることにも気づかずに、お友達が多くてリア充を送っていると思っている彼女に唯一、媚を売らなかったのが私。 それが珍しかったのか、マヤはしょっちゅう私に絡むようになったし、どんな手を使ったのか分からないけど隠していたはずの進学先まで調べてついて来る。 彼女のオトモダチが遊びに誘った時に「ミキちゃんが行かないのなら行かない」という断り方を何度かすると私は彼女たちから虐められるようになった。 どうしたって私はマヤという呪われた存在から離れられないのか。 「やっと、追いついた。もぅ、足早いよ」 肩で息をしながらにこりと笑うマヤに一度冷たい視線を送った私を彼女の息が整うのを当然だけど待ったりはしない。 「ねぇ、何の授業を取るか決めた?どうせなら一緒の授業を取ろうよ」 授業内容を書いたパンフレットを見ながらマヤは自分の興味のある授業を選んでいく。 私はマヤと同じ授業を選ぶつもりはない。彼女の中では既に決定事項のようだけど冗談じゃない。 同じ授業なんか選んだら宿題丸写しさせてとか、いろいろ面倒なお願いをされるに決まっている。 「あっ」 「えっ?」 パンフレットを見ていたマヤは足元を見ていなかったようで、階段に気づくのが遅れた。 階下に向けてマヤの体が傾く。彼女の体が落ちて行くのがスローモーションに見える。 マヤが落ちると思考停止しそうな頭で思った時、腕を強く引っ張られた。 マヤが私の腕を掴んで引っ張ったのだ。 嘘でしょっ。と、思った時にはすでに体は階段を転げ落ちた。何度も体が打ち付けられていた。 頭に生暖かい感触がある。多分、血だろう。 視界が霞む。 ぼんやりする頭にいろんな人の悲鳴や「救急車を呼んで」「人が落ちたぞ」などの声が入って来る。 私、死ぬのかな。 大学に入学したばかりなのに。 恋もまだなのに。 あんな女に絡まれて、最後はあの女に巻き込まれて死ぬの。 「‥‥‥最悪」
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