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そらが手を止めたのはそれからどのくらい経った頃だろう。 汗だくで喉がカラカラ。そして空腹だった。 そう言えばと、さっきの女性が弁当があると言っていたのを思いだして玄関先に鎌を置いて中に入った。 途端に涼しい空気に肌が毛穴をきゅっと締めた気がした。 「ここまでクーラー効いてるのか」 半分呆れ、半分ありがたくてふうっとため息をつく。 取り敢えず、シャワーを浴びよう。 よれよれのスニーカーを脱ぎ捨て、浴室へ向かう。 後でスニーカーも洗わなくちゃと考えながら。 シャワーを浴び、洗濯機の中で乾燥された物の中から適当にTシャツとハーフパンツを出し履いた。 案の定オーバーサイズで、男の何か大事なものを捨ててしまったような微妙な気持ちになったが、無視してさっぱりしたと頭に思い込ませキッチンに移動。 ダイニングテーブルの上に弁当が2つ並んでいた。 夕べ食べたようなその辺で買ったようなものではなく、少し高級な和食の店の折り詰め。 食べていいんだろうかとちょっとだけ思ったが、あの女性が言ってたのだからと言い聞かせ、空腹に負けて弁当の蓋を開けた。 「うまそ」 急いで冷蔵庫からお茶のペットボトルを持ってきて、割り箸を割るのももどかしく食べ始めた。 煮付けも焼き物も、漬け物でさえ美味しくて何故か泣きそうになりながら完食した。 食べ終わって満足のため息をついた。 その直後違うため息が出た。 一宿一飯の恩義。 増えてしまった。 玄関前の草刈りが終わったら、庭の方も草刈りをしよう。何日かかるだろうか…?
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