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やがてキッチンから一人の男が出てきた。 トレイを持ち、そのトレイの上にはサラダとカップに入ったスープ、チーズトーストが2人分。 それをテーブルに並べ、もう一度キッチンへ戻り、ソーセージと目玉焼きのお皿を一枚ずつ両手に持ってくる。 「食え」 そう言って男は正面椅子に座り、箸を持って食べ始めた。 その様子をポカンと眺めていた。 食べずにずっと自分の顔をガン見している相手に、もともとあった眉間の皺を深くしじろりと睨みかえす。 「食え」 同じ言葉を繰り返し言われ、やっとスプーンを持ちスープをすくって口に入れる。 「んまっ」 空腹を思い出しガツガツと食べ始めた。 「お前、名前は?」 トーストに噛りついている時聞かれ、考える時間稼ぎにゆっくりと口の中の物を咀嚼し飲み込んだ。 「そら」 「そら?青空とかの?」 「空っぽとか上の空のそら」 「フルネームは?」 「…」 目玉焼きの目玉を箸で突っつくと中から半熟の黄身が溢れた。 それをトーストで掬う。 「家は?」 「…」 「家族」 「…」 男はため息をついた。 強面の顔が益々怖くなる。 自称そらはそれをチラリと見て、またスープを飲んだ。 「野菜も食え」 「おっさんはオレの母ちゃんか」 男はギロリと空を睨み付け、 「おっさんじゃない。松浦光滋だ」 松浦は箸を置き、そらのサラダにドレッシングをかけた。 むすっとした顔でそのサラダを食べ始める。 「ベジファーストじゃないのかよ」 「なんか言ったか?」 「なんでもねーよ」 全て食べ終わり胃袋が満足すると、松浦がいれてくれた緑茶を飲む。
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