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「オレの服は?」 「まだ洗濯機の中」 「乾くかな」 「そろそろ乾燥も終わんじゃないか」 そう言って立ち上がり何処かへ行った。 そらはソファーに膝を抱えて座り、天井を見上げる。 天井は丸太が剥き出しになったような梁が見えた。黒光りしたような色。 そう言えばそらが裸足で歩いた床も木目の目立った板が張ってあった。 まるで昔の日本家屋のようだ。 でも壁や家具照明等は現代風の物だった。 「ほらできてたぞ」 寝室とは別のドアから入ってきた松浦はふかふかに乾燥した空のTシャツとジーパンを放ってよこした。 「あぁっ、Tシャツ縮んでる!」 お気に入りのブルーのTシャツが一回り小さくなっていた。安物のせいか。ジーパンの方は大丈夫そうだ。 気に入ってたのにと呟くと、 「別なやつ買ってやるよ」 と嫌そうに言われた。 「別にいいよ。でも代わりに着るの貸して」 いいと言いながら恨めしそうに松浦を見返すと、チッと舌打ちして寝室に入っていった。 クローゼットをかき回してやっと戻ってきた。 「ほら」 そう言ってまた放ってよこされたのは、まだ袋から出されていない赤いTシャツ。 「新しいのいいの?」 「仕事で貰ったやつだ。ぞうせ俺には小さい」 サイズはL。赤地に胸のところに文字か記号か分からないのが横に並んでいた。 着替えようとすると松浦はもう一つ放ってよこす。 「今度は何?」 「下着。コンビニで買ってきた」 「ありがとう」 着ていたスウェットを脱ごうすると、と松浦はむっと顔をしかめ、 「あっちでやれ」 と、寝室を顎で示す。 「はいはい」 唇を尖らせて洋服を抱えて寝室へ行った。 Tシャツと下着をビニール袋から取り出す。下着はよく見るメーカーのトランクスだった。 ばっと男らしく脱いですっぽんぽんになり、トランクスに足を通す。 「Mサイズ、ぴったり」 次は赤いTシャツ。 「ちっと大きいか」 そして、自分のジーパン。 着替え終わって自分の格好を見下ろすと、なんか今までの自分と全く別の物になった気がする。 「うしっ」 両手でパンッと頬を叩くとリビングに戻った。 食器を洗っていたらしい松浦が手をタオルで拭きながらキッチンから出てきた。 「でかかったか」 むうっ。 むすっとした顔になったそらに、 「歯ブラシ置いといたから、歯磨いて顔洗ってこい」 「うー」 唸りながらそらはさっき松浦が洗濯物を持ってきた時出てきたドアを開けた。 そこは廊下になっていてドアが2つずつ両側にあった。 左手の手前のドアを開けるとそこはトイレ。 その奥のドアは洗面所。 中に入り周りを見回す。 洗面台の脇に乾燥機能付きのドラム式洗濯機。奥に曇りガラスの扉。開けてみると案の定バスルームだった。 洗面台に戻る。 新しい歯ブラシが置いてあったので封を切り、コップに歯ブラシと歯磨き粉が置いてあったのでその歯磨きのチューブを押し出す。 名前しか知らない他人の使った歯磨き粉なのに不快も感じず使った。
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