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私は、決心いたしました。
「お父様、お母様……もし私に良い縁談がございましたら、受けてくださいませんか」
「そ、そうか……実は、イルアード侯爵からリリーに婚姻の申し込みをいただいているのだ。イルアード侯爵はお前よりも20歳年上で遠方に住んでいる。婚姻すれば、そう簡単に私たちと会うことはできなくなるだろう……
嫌なら、断ってもいいのだぞ?」
では、イルアード侯爵と結婚して遠方に住むことになれば、マリアンヌとジェイコブ様の顔を見ずに済むということですわね。
「私、お受けいたしますわ」
その時、扉がバーンと開きました。
「お待ちになって、リリーお姉様!!」
「マリアンヌ。貴女、盗み聞きしていらしたの?」
淑女としてあらぬ態度を指摘され、マリアンヌは顔を赤らめて俯きました。
「それ、は……申し訳ございませんっっ。私、リリーお姉様のことが心配でっ。
ねぇ、リリーお姉様。イルアード侯爵とご結婚などなさらないで!!」
「マリアンヌ。私も貴女と離れてしまうのは寂しいけれど、これは我が家のためでもありますのよ。侯爵夫人ともなれば、格が上がりますもの」
「で、ですが、イルアード侯爵は20歳も年上の方なのですよ?」
「年齢で人を判断してはいけませんわ」
「どんな方かも分かりませんのに……」
「それは、これからゆっくり知っていけばいいことです」
「愛してもいない方との婚姻など……」
ジェイコブ様の顔が脳裏に浮かび、グッと拳を握りました。
「大丈夫、ですわ……
私、イルアード侯爵夫人として立派に務められるよう努力いたします」
今度こそは、婚約者に背を向けられることのないように……
お父様は私の希望により、すぐにイルアード侯爵にお返事を出してくださいました。うまくいけば1週間以内に婚約を交わし、学園を卒業と同時に私はイルアード侯爵の元へと嫁ぐこととなります。
ジェイコブ様との結婚を夢見ていた時もありましたのに……顔も知らない年上の方の元に嫁ぐことになるだなんて、分からないものですわね。
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