婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 私は、決心いたしました。 「お父様、お母様……もし私に良い縁談がございましたら、受けてくださいませんか」 「そ、そうか……実は、イルアード侯爵からリリーに婚姻の申し込みをいただいているのだ。イルアード侯爵はお前よりも20歳年上で遠方に住んでいる。婚姻すれば、そう簡単に私たちと会うことはできなくなるだろう……  嫌なら、断ってもいいのだぞ?」  では、イルアード侯爵と結婚して遠方に住むことになれば、マリアンヌとジェイコブ様の顔を見ずに済むということですわね。 「私、お受けいたしますわ」  その時、扉がバーンと開きました。 「お待ちになって、リリーお姉様!!」 「マリアンヌ。貴女、盗み聞きしていらしたの?」  淑女としてあらぬ態度を指摘され、マリアンヌは顔を赤らめて俯きました。 「それ、は……申し訳ございませんっっ。私、リリーお姉様のことが心配でっ。  ねぇ、リリーお姉様。イルアード侯爵とご結婚などなさらないで!!」 「マリアンヌ。私も貴女と離れてしまうのは寂しいけれど、これは我が家のためでもありますのよ。侯爵夫人ともなれば、格が上がりますもの」 「で、ですが、イルアード侯爵は20歳も年上の方なのですよ?」 「年齢で人を判断してはいけませんわ」 「どんな方かも分かりませんのに……」 「それは、これからゆっくり知っていけばいいことです」 「愛してもいない方との婚姻など……」  ジェイコブ様の顔が脳裏に浮かび、グッと拳を握りました。 「大丈夫、ですわ……  私、イルアード侯爵夫人として立派に務められるよう努力いたします」  今度こそは、婚約者に背を向けられることのないように……  お父様は私の希望により、すぐにイルアード侯爵にお返事を出してくださいました。うまくいけば1週間以内に婚約を交わし、学園を卒業と同時に私はイルアード侯爵の元へと嫁ぐこととなります。  ジェイコブ様との結婚を夢見ていた時もありましたのに……顔も知らない年上の方の元に嫁ぐことになるだなんて、分からないものですわね。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加