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「僕は、バカだ……」
ジェイコブ様が拳を握り締め、俯かれました。
「なにを突然……」
「僕は、ずっとリリーのことが好きだったのに、自分に自信がなくてそれを言い出せず、勇気を出して両親を通じて婚約の申し入れをして受け入れてもらえて喜んでいたのに、僕に対して冷たい態度を取るリリーが寂しくて、僕のことなど気にもかけていないのだと焦って……リリーに嫉妬してほしくて、マリアンヌが婚約者だったらよかっただなんて馬鹿な嘘をついて……」
ぇ。なにを……仰っていますの!?
「マリアンヌと婚約してからもまだリリーのことが諦められなくて、君の気を引こうと毎日家に通い、声をかけようとして……もう嫌われていることなど、分かっていたというのに」
だって、それは……マリアンヌのことが好きだから毎日訪ねていたのではないのですの?
「……僕は、かっこよくないし、勉学だって優れていないし、剣術もまるっきりだめで、臆病で、弱虫で……美しく賢いリリーには相応しくないと分かっている。
それでも、僕は……僕は、君が好きなんだ!! 婚約する前から、ずっと君を好きだった!!」
「な、なにを仰ってますの!?
貴方はもう、マリアンヌの婚約者ですのよ? マリアンヌを裏切るおつもりですか? 私は、これからイルアード侯爵と婚約を交わし、嫁ぎますのよ!
今更……ッグ……私の心を、かき乱さないでください!!」
ジェイコブ様が、ガバッと顔を上げました。
「リリー、心がかき乱されるってことは、僕のことを少しでも思ってくれているのか?」
ハッとし、顔を逸らしました。
「昔の、話ですわ……
私は、妹のマリアンヌが大切なのです。あの娘を裏切ったら、いくらジェイコブ様でも許しませんわ。マリアンヌは私などよりずっと美人で、素直で、優しくて……私を慕ってくれているのです。
私は、マリアンヌに幸せになってほしいのです」
ガサッと茂みから音がして、誰かがジェイコブ様の元へと歩いてきます。それは、マリアンヌでした。
あぁ、マリアンヌに私たちの会話を聞かれてしまいましたわ……どういたしましょう。
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