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婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私の婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。
無理もありませんわ。目も覚めるようなブロンドに天使の艶のある美しい巻髪、色素の薄い美しい白い肌、ガラスのような美しい青いぱっちりとした大きな瞳、もぎたてのりんごのような可愛らしい頬、控えめでいながらもぷっくりとした瑞々しい唇の、誰もが目を奪われる美しい容姿ですもの、惹かれるのは当然ですわ。それに容姿だけではなく、性格も明るく、思いやりがあって、私の自慢の妹なのです。
ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
私はマリアンヌに尋ねました。
「マリアンヌ、ジェイコブ様が私よりも貴女と婚約したいと仰っておりますが、どういたしますか?」
「え……リリーお姉様は、それでいいんですの?」
「えぇ。マリアンヌさえよければ」
マリアンヌはジェイコブ様をじっと見つめてから、頷きました。
「では私、ジェイコブ様と婚約いたしますわ」
「分かりました。ではその旨、お父様とお母様、そしてジェイコブ様のご両親にもお伝えしておきますわね」
サクサクと進めておりますと、
「ちょちょちょちょちょちょーっっ!!」
ジェイコブ様が狼狽しながら、私の手をとります。
「なんですの? もう私は貴方の婚約者ではありませんから、気軽に女性の手を触れてはいけませんわ」
「え。リリー、ほんとに、ほんとにいいのか? 僕が、マリアンヌと婚約しても?」
「貴方がマリアンヌの方が良かったとおっしゃったんじゃないですか」
「そ、それはそうだが……いきなり、こんな……」
「手続きは迅速に進めた方がよいでしょう。婚約者ではない私など、目障りでさっさと立ち去ってほしいでしょうから。
マリアンヌとお散歩でもしてきたらどうですか?」
マリアンヌがジェイコブ様の腕に手を回し、にっこりと微笑みました。
「ジェイコブ様、まいりましょう?」
「ぇ、あ……あぁ」
翌日、私は両親に婚約破棄及び、ジェイコブ様とマリアンヌの婚約締結の報告をいたしました。
私であろうとマリアンヌであろうとジェイコブ様との姻戚関係が結べるのですから、両親は反対することはなく、ジェイコブ様のご両親も同様のご意見でした。
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