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プリュイはホウオウ様の羽根に選ばれたりしなければ、これからも両親のもとで育ち、たくさんの思い出を作っていけるはずだったのに。大人になったら僕のお嫁さんになって、子どもが産まれて家族が増えて、幸せに生きていくことだってできるのに。
どうして誰も、そんな未来を望まないんだ!?
僕はおばさんの手を振り払って走った。
自分がおかしいのか、みんながおかしいのか分からない。まるで、僕だけを置き去りにして、プリュイが羽化に選ばれる前とは違う世界になってしまったみたいだ。
僕はひとりで部屋にこもり、何日も鬱々と考えた。羽化をやめさせ、プリュイを救う方法を。そして、僕が思い付いたのは、男として、人として最低の、蛮行だった。
羽化できるのは、穢れなき処女だけ。
それなら、穢してしまえばいい。
僕にはその力がある。プリュイの羽化を止められるのは、僕だけだ。
僕だって分かっていた。それが彼女を、周りの人たちを、僕自身をも激しく傷つけることを。僕はもしかしたら罰を受け、もうプリュイのそばにはいられないかもしれない。そこまで考えて尚、彼女を止めるにはそれしかないんだと、僕は自分を奮い立たせた。
ごめんねプリュイ。でも僕は信じてる。いつかきっと、君も分かってくれると思うんだ。
僕は禊ぎの儀式を終えて山を下りてきたプリュイを待ち伏せ、二人でよく遊んだ夕暮れの丘に連れ出した。
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