羽化

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 僕は臆病者だ。  できなかった。プリュイを穢すことなんか、できなかった。  僕が誘った丘へ、彼女はなんの疑いも抱かずについてきた。きれいな目、きれいな顔、きれいな心で。  美しく眩しいプリュイ。その全身が、夕陽を巻き取り淡く輝いていた。それは彼女の体が羽化のために準備をしているせいか、それとも僕の彼女を好きな気持ちがそう見せているだけなのか、分からなかったけれど。 「ありがとう、エカ。私も、あなたと話したいと思っていたの」  清らかな声でそう言ったプリュイには迷いも恐れもなく、すでにその身は神獣ホウオウと共にあるかのように、神々しい光をまとっていた。 「エカが私を心配してくれてること、分かってる。でもね、私は死なないし、これは別れではないのよ」 「……うん」 「ホウオウ様は、この国を、みんなを、守ってくれているの」 「……知ってる」 「私もね、みんなを守りたいの。ホウオウ様の羽の一部になって、大きく羽ばたいて……雨を呼び、畑を見守り、大切なみんなに恵みをもたらすお手伝いがしたいのよ」 「でも……っ」  反論したいのに、彼女を引き止める言葉が見つからない。唇を震わせる僕に優しく微笑み、プリュイは輝く両手で僕の頬を包んだ。 「大好きよ、エカ」 
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