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「伊織?何ぼさっとしてるんだ?早く帰らねぇとまずいぞ」
さも、一緒に帰るのが当たり前の様に述べる紫月の言葉から嘘は感じなかった。まるで今の俺の姿も当たり前のようで。
紫月達は色んなもの……一見ガラクタに見える鉄材や木材、見たことない石や機械やらを背負ってる大きく頑丈そうな鞄に沢山詰めて手にも抱えている。
先程言ってためぼしい物はあれらのことだろうか?何に使えるか想像できない。
まだ理解は足りないところは多かったが、時間が短いせいで記憶が全部甦ってないせいだろう。
そう自分に言い聞かせ、わかった、と返事をすれば両腕に黒い筋を走らせ近場にいたゾンビをひっ掴み半ば振り回す様にして無理矢理道を作る。
どうやってるのかは分からないけれど、何故か出来た。今の俺は自己強化してゾンビを蹴散らすのに最適らしい。
そして手荷物の多さから恐らく2人は今戦えず、今の俺のステータスから考えるなら俺が戦闘メンバーなのだろう。
未だ脳は混乱して不快感もすごい。吐き気もあるが状況整理から考えて戦闘メンバーである俺が動けなければ恐らく2人は死ぬ。
ならゲームの主人公のように蹴散らすしかない。
こういうところでゲーム脳が役立つとは思わなかったけど、まずは生き残ることを考えよう。
何が起きてるかは、生きて帰ってから全て整理しよう。
そうでなければ、全て分からない。紫月たちと帰ることが、今の俺の最も目指すべき目標で。
……きっと紫月たちは全て知ってると信じよう。
そう言い聞かせ続け俺たち3人は帰路に着く。
何も記憶が無い俺自身、この世界で過ごすのは初めてのはずなのに初めてには感じなかった。
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