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二日目。今の人々
俺達は道中にも蔓延るゾンビ達を蹴散らしながら無傷で帰ってこれた。混乱しつつも考えるだけ俺自身は答えを持たない可能性が高いと判断して何も考えず突っ込んで帰った。
アドレナリンでも出ていたのか途中から恐怖心はなく怪我のことも考えずに突っ込んでいたのに無傷だと言うから我ながら豪運なのか無鉄砲なのかはわからない。
外は見慣れた街だったが、少し異なる点も点在した。見たことない建物や見覚えのない家がいくつかあったのだ。
家に着けば体はみるみるうちに慣れ親しんだ視点に変わり、玄関の靴箱に付いていた姿見を見れば鏡で19年間散々見慣れた女の姿になりさらに混乱した。
俺の家は両親と暮らしてた実家で、生活こそ一人暮らしに近いものだったが広さはそこそこある。
紫月達も何度も来ている。勝手知りたるなんとやら、普通に入れば「ただいまー」と言って普通に住んでいるように入っていく。
着いて入れば親がいる気配はなく、代わりに紫月達と共によくオフ会をするネット友達やリアルの友達、見覚えのない歳の近そうな人などがシェアハウスでもしてるように居た。
「……え、じゃあ伊織は今の事態の記憶ないの!?」
戸惑いつつも紫月達に自分の記憶について話すととんでもなく驚かれた。まるでそんなことありえないとでもいいたげな程に。
本当に覚えてないんだよ悪いかコノヤロー。と内心で毒づきながら頷けば皆が顔を見合せ少し考えている。覚えてないことはそんなに不味いのだろうか?
「……分かった、覚えてないって言うなら教える。こんな状態だし記憶が飛んでもおかしくない。ただ伊織、パニックは起こさないでくれよ」
普段は比較的軽いノリに乗ってくれる葵が珍しく、それでいて本気である時にしか見せない真面目な顔で言うものだから俺はぎこちなく頷くばかりだ。
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