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思っていたよりすぐに指輪は見つかった。
汚れてしまったサクラの指輪。
それでも洗うとほとんど元通り綺麗になった。
桜に渡すと安心したように顔をほころばせる。
涙が止まったのを見て、オレも胸がスッとしたような気がした。
でもすぐにさっきのグループが寄ってきて、桜に声をかける。
「指輪こわれてんじゃん!だっせ!」
そう言うと可笑しそうに笑った。
そう。
汚れこそ落ちたが、桜の指輪は少し欠けてしまっていたのだ。
花びらが一枚なくなっている。
それに気づいた桜はまたしょんぼりと肩を落とす。
いじめっ子が笑えば笑うほど桜は落ち込み、瞳に涙が浮かんでいく。
その涙を見ると、オレの心にどうしようもない苛立ちが沸き上がってきた。
桜が泣くと、イライラする。
昔からずっと。
甘ったれで、ワガママばかりで、うっとうしくて。
すぐに、……泣いて。
だから嫌なんだ、桜のこと。
泣かれるとイライラするんだ。
でもすぐに泣いて。泣いてばかりで。
泣いてほしく、ないのに。
「………」
なおも桜にちょっかいをかける子供たち。
オレはその中心の、一際大きい声で囃し立てているやつの前に立ち
「……さくらのこと、泣かせるな」
とささやくと、大きな身体をドンと押した。
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