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少しうつむく桜。
その肩は細くて、小さい。
こんなの、強く触れたら壊れてしまうんじゃないかと思うくらいに。
「……あっ、えーと……そうだ、テスト勉強しようっと。やっぱり数学かなあ」
気まずさを感じたのだろうか。
不自然に明るい声をあげ、桜が慌ただしく勉強の用意を始める。
問題集を開き、筆箱からシャーペンと消しゴムを取り出す。
「……あっ」
桜が消しゴムを床に落とした。
猫の習性か。すぐにイカ玉が反応してじゃれついて弾き飛ばす。
「……おっと」
「だ、ダメだよ。イカ玉ちゃん」
オレの方に飛んできた消しゴム。
拾おうと手を伸ばす。
すると、消しゴムとは違うひんやりした感覚。
同じように拾おうとしていたのだろう。
桜の手が、触れた。
「……あ、ご、ごめん、お兄ちゃん!」
桜が手を引っ込めようとする。
でもオレは咄嗟にその手を掴んだ。
どうしてそんなことをしたのかわからない。
ただ、桜の手がとても冷たくて
まるで血が通っていないかのようで。
それがひどく胸をドキリとさせたのだった。
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