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リビングに二人。
手を繋いだまま向かい合う。
桜が、近い。
息のかかりそうな距離に桜がいる。
色の薄い瞳に、オレの姿が映っていた。
どうして、こんなに違うのだろう。
髪も、手も、瞳の色も……
桜はオレとこんなにも違っていて……綺麗だ。
オレは桜の手を握ったまま、そっと自分の方へ引き寄せた。
あと、少し力を入れれば
桜の華奢な身体はこの腕の中におさまってしまうだろう。
───ガシャン!
突然。
何かを落としたような音が響く。
驚きで、思わず手を放してしまう。
掌に少し汗をかいていた。
……情けない。
どれだけ緊張したんだよ。
音の犯人はイカ玉。
テーブルに置いていたペンたてを落としてしまったようだ。
ニャオンと鳴く声が少し弱々しいのは、叱られると思っているからだろうか。
……いや。
そんなことより。
オレは深くため息をつく。
身体からすべて吐き出すかのような深い息。
のぼせ上がっていたようだった頭が冷えていくように感じた。
……オレは、何をしていたんだ。
「悪い……」
謝ると、桜は慌てたように首を振る。
あどけない表情。
オレがどうして謝ったか、本当に理解できているのだろうか。
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