primula【青春のはじまりとかなしみ】

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●○●○●○ 三日間の期末テストが終わった。 一学期とはいえ、オレたち受験生にとって定期テストはかなり重要な意味がある。 夏は受験の天王山なんて言うけれど。 これから控える夏休みをどう過ごすか。 今回の期末はその入り口なのかもしれない。 そんなわけでテストが全て終わったというのに。 教室の空気は、完全に開放的というわけにはいかないようだ。 部活に向かうやつや、友達と帰るやつに混じって、もう新たに問題集や単語帳などを持って立ち上がる姿がある。 このあとも変わらず勉強……ということだろう。 ……オレも、そろそろしっかりしないと。 まだ志望校もハッキリしてないんじゃ話にならないよな。 母さんは好きなとこに行けと言ってくれているけれど。 そもそも何を基準に選ぶべきか。 3年生になったばかりのときは、少しでも大学進学に有利なように、それでいて学費などの負担は少なく、と思っていたけれど。 ……それで本当にいいのだろうか。 最近、そんな疑問が頭をもたげるのだ。 テストが終わってもいまいち気が晴れない。 思わず小さなため息をつくオレに、クラスメイトが声をかけてきた。 「……望ー、お疲れ。やっとテスト終わったなー」 「瑞穂(みずほ)。おー、お疲れ」 川澄瑞穂。 一年からの友人で、サッカー部のエース。 「瑞穂はこれから部活か?」 「ああ。もうすぐ大会だし、気合い入れてくるよ」 そう言って笑う瑞穂。 キリッとした二重の目に、爽やかな笑顔。 同性の目から見ても文句なしのイケメンってやつだ。
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