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演劇部は社会科室で活動している。
桜は以前そう言っていた。
昼飯を食べ終えたオレは、社会科室のある二階へと向かう。
すでに活動を始めている部があるのか、校内には掛け声が響いていた。
演劇部はもう始まっているだろうか。
それならサッと見ていくだけにしよう。
あの雨の日以来、直接桜に会っていなかった。
いつも通り能天気に元気にやっていればそれでいい。
……それだけでいい。
「……あれ、高橋」
「浅間」
社会科室の前に浅間が立っていた。
ジャージ姿だ。
ということは、これから部活を始めるところか。
社会科室の扉は開いていて、中からかすかだが話し声が聞こえてきている。
おそらく他の部員のものだろう。
桜もあの中にいるのだろうか。
……と思っていたのだが、浅間の口から思わぬ言葉が出てきた。
「ちょうど良かった。高橋、沢渡さん知らない?」
「え……部活来てねえのか?」
「うん。休みならその連絡が来るはずなんだけど、それもないし。沢渡さん、いつもは遅刻なんかしないからさ」
「……」
心臓がドキリと大きな音を立てた。
それは、虫の知らせというやつなのかもしれない。
……嫌な予感がする。
「一応LINEはしたんだけど既読にもならないし。うーん……そろそろ部活始めたいんだけどなあ」
「………美作は?」
「え?」
「美作、来てるか?」
「美作くん?」
オレの質問に、浅間は意外そうに目をしばたたかせた。
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