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「うん。美作くんは来てるよ。中で準備してる」
あっさりそう言うと、浅間は社会科室の扉を指差した。
開け放たれたそこから中を見る。
確かに男子生徒が二人、何やらしゃべりながら作業していた。
二人とも、二年の学年カラー・緑のジャージを着ている。
長身の優男みたいなのと、背が低めの短髪の男子。
どっちだ……?
背が低い方は見覚えがある気がするけど、ハッキリと自信はない。
オレの疑問を察したのか、浅間が「美作くんは背が高い方だよ。泣きボクロがある子」と教えてくれた。
なるほど、優男の左目の下に小さなホクロがある。
あいつが美作……。
部活にこうして来ているってことは、美作は関係ないのか?
……いや。
まだわからない。
「……悪い。ちょっと邪魔する」
「え、高橋!?」
驚く浅間を尻目にオレは中に入ると、二人の側に立った。
美作も、一緒にいた短髪もギョッと驚いた顔をする。
「せ、生徒会長……?」
短髪の方が訝るような視線をオレに向けた。
一方、美作はすでに驚きも落ち着いた、冷静というよりは冷めた目でオレを見る。
……まるでオレが来ることを予想していたかのようだというのは、考えすぎだろうか。
オレはなるべく冷静に話しかけた。
「こんにちは。少し美作くんに話があるんだけど、いいかな?」
「僕に……?えー、なんでしょう?」
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