primula【青春のはじまりとかなしみ】

32/35
前へ
/259ページ
次へ
「うん。美作くんは来てるよ。中で準備してる」 あっさりそう言うと、浅間は社会科室の扉を指差した。 開け放たれたそこから中を見る。 確かに男子生徒が二人、何やらしゃべりながら作業していた。 二人とも、二年の学年カラー・緑のジャージを着ている。 長身の優男(やさおとこ)みたいなのと、背が低めの短髪の男子。 どっちだ……? 背が低い方は見覚えがある気がするけど、ハッキリと自信はない。 オレの疑問を察したのか、浅間が「美作くんは背が高い方だよ。泣きボクロがある子」と教えてくれた。 なるほど、優男の左目の下に小さなホクロがある。 あいつが美作……。 部活にこうして来ているってことは、美作は関係ないのか? ……いや。 まだわからない。 「……悪い。ちょっと邪魔する」 「え、高橋!?」 驚く浅間を尻目にオレは中に入ると、二人の側に立った。 美作も、一緒にいた短髪もギョッと驚いた顔をする。 「せ、生徒会長……?」 短髪の方が訝るような視線をオレに向けた。 一方、美作はすでに驚きも落ち着いた、冷静というよりは冷めた目でオレを見る。 ……まるでオレが来ることを予想していたかのようだというのは、考えすぎだろうか。 オレはなるべく冷静に話しかけた。 「こんにちは。少し美作くんに話があるんだけど、いいかな?」 「僕に……?えー、なんでしょう?」
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加