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美作は口調だけは戸惑った風だったが、顔は薄く笑っていた。
その態度が妙にオレを焦らせる。
「……沢渡さん知らないか?まだ来ていないんだろう」
「さあ……僕も心配しているんです。というか会長、わざわざそれを聞きにここまで来たんですか?」
「ああ。……いや、…たまたま浅間さんから、沢渡さんがまだ来ていないと聞いて……」
「ふーん……そういえば会長と沢渡さん、幼なじみでしたよね。だから心配してるんですか?」
「……ああ。まあ……。君、本当に何も知らないのか?」
美作がクスッと笑った。
「わかります。幼なじみって、なんだか特別ですよね。鬱陶しいときもあるんだけど、いないと寂しいというか……」
「……話を逸らそうとしてないか?」
美作の人を食ったような態度に、つい苛立ってしまう。
すると美作はますます笑みを深くした。
「いやー、だって本当に知らないですし。てか、会長はどうして僕が何かを知ってると思うんですか?」
挑発するような視線。
からかうような軽口。
美作が何も知らないとは思えないのに。
その糸口を上手く掴めない。
……いや、落ち着け。
話を逸らそうとするのは、触れられたくない何かがあるからだ。
相手のペースに乗ってはいけない。
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