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冷静になろうと小さく息を吐く。
でも美作はそんなオレを試すような目でじっと見てきた。
「会長。沢渡さんからもしかして何か聞いています?」
「なにか、って……」
「別に。なにも聞いてないならいいんですけど。
沢渡さんってあんまり冗談が通じないから、僕のことであることないこと言ってたらどうしようか不安で……」
「なっ……」
「僕はあくまで彼女といい先輩後輩関係でいたいと思っているんですけど、沢渡さんにはうまく伝わらないみたいで。僕も困ってるんです」
「何いってんだ、お前……。本当にそう思ってるなら、後輩の……しかも女子を不安にさせるようなこと言うなよ」
「不安にさせることって?やっぱり沢渡さんから何か聞いてます?」
「とぼけてんじゃねえよ!!」
思わず叫び、美作をにらむ。
美作はオレが怒ったことが面白いのか、笑みを深くした。
「会長、割と口悪いですよね。そっちが素ですか?」
「だから……っ」
「──シュン!やめろ!もうやめろ!!」
突然。
それまで黙っていた短髪の男子が声を張り上げた。
すると、美作からニヤニヤした笑顔が消える。
「勇ちゃん……」
そして短髪を悔しそうに見ながら、そう呟いた。
勇ちゃん、と呼ばれた短髪は立ち上がり、オレに向き直る。
「……生徒会長、おれも一緒に探します。たぶん、なにかトラブルがあったのかもしれない」
それは確信めいた口調だった。
何か知っているのか、気づいているのか。
彼の無表情な目からはあまり伝わってこない。
でも、とにかく、この『勇ちゃん』はオレの味方についてくれるようだ。
「……わかった」
「それと、シュンが失礼なことを言ってすみません」
「……いや。こっちこそ……」
「シュン」
『勇ちゃん』は、美作を一瞥すると眉間にシワをよせる。
怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
「……なに、勇ちゃん」
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