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北校舎の空き教室。
出入口は閉まっていた。
美作先輩は……まだ来ていないのかな。
「し、失礼します……」
恐る恐る開けると、中からむわっと熱気がもれ出してくる。
どうやら長い間閉めきられていたようだ。
普段は使われていないということだろうか。
教室には誰の姿もない。
私はとりあえず中に入ると窓を開け放った。
「ふう……」
窓から風が入ってくると、いくらかマシになった気がする。
もちろん外も暑いから、あくまでマシになったって程度だけど。
それでも淀んだ空気が外に出ていくのを見ると、なんだか胸がスッとした。
「先輩……いつ来るのかな」
場所はここであっているよね。
……うん、きっと大丈夫。
このまま待っていよう。
私は窓の近くに立ち、そこから見えるグラウンドをぼんやり眺めた。
ここから見えるのは、中グラウンド。
校舎にぐるりと囲まれるようになっていて、あまり大きくはない。
ここを使うのは、たぶんバスケ部とテニス部。
移動式のバスケットゴールが置かれた横に、緑のフェンスに囲まれたテニスコートがある。
今はおそらくどのクラブも昼食時間なのか、誰も活動している様子はない。
でもあと数十分もすれば、あっという間に部活動の声で賑やかになるのだろう。
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