いびつな、be with you

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「……関係なくねえよ」 「は?」 お兄ちゃんが一瞬私を振り返る。 その目が、私になにかを聞いてきた。 いや、というより、謝っているように見えた。 ……ごめんな。 まるで迷っているようだった。 お兄ちゃんが私に迷いを見せるのは珍しい。 私は返事の変わりに、手を強く握り返した。 大丈夫。 お兄ちゃんが決めたことなら、私はきっと大丈夫。 お兄ちゃんはうなずき、栗原先輩たちを一瞥した。 小さくため息をつく。 そして…… 「関係なくないつってんだよ。 オレは……オレたちは、付き合ってるから」 そう言った。 その言葉は、いやによく響いて聞こえた。 私がそう感じただけで、いつも通りのお兄ちゃんの声だったけれど。 それでも私の耳にはハッキリと聞こえてきた。 栗原先輩たちが顔色を変える。 驚きから呆れに、そして最後には白けた表情へ。 私から完全に興味を失っていくのがわかった。 「…だから、こいつに構うのやめろ。あと、三人がかりとか恥ずかしくねえのかよ」 「はー。なにそれ。馬鹿馬鹿しい。……もう、いいわ。マジで白けた」 「栗原……」 「行こうぜ」 栗原先輩は、他の二人と一緒に教室を出ていこうとする。 その背中をお兄ちゃんが呼び止めた。 「栗原。お前、なんでこんなとこに桜と居たんだよ。どうやって……」 「別に。おれが沢渡さん好きって言ったら、ダチが協力してくれたんだよ。それだけ」 そう言うと、栗原先輩たちは今度こそ教室を出ていった。
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