いびつな、be with you

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「……ふぅっ……」 先輩たちの姿が見えなくなると、一気に気が抜けた。 私は膝から崩れ落ちてしまう。 「桜っ!」 お兄ちゃんが慌てて支えてくれた。 「大丈夫かよ?」 「う、うん。ちょっと……ホッとして……っ」 そこまで言うと、ヒックと喉が鳴る。 嗚咽がもれ、涙がこらえきれずに更に溢れだした。 「うっ……ひっ、うう……」 「桜……」 「こ、こわかっ……た……」 栗原先輩たちの視線。 笑い声。 私より高い身長に、たくましい身体。 絶対逃げられないと思った。 ……もし、お兄ちゃんが来てくれなかったら。 あのとき栗原先輩に手を掴まれていたら。 どうなっていたのだろう。 「お兄ちゃん…っ…」 「……どうした?」 「き、…きてくれて…ありが、とう……っ」 「………ああ」 お兄ちゃんが私の頭に手を乗せる。 ぽんと軽く撫でたあと、そっと抱き寄せた。 私の頭が、お兄ちゃんの胸に。 お兄ちゃんの鼓動が伝わってくる気がした。 緊張しているのか。少し速い胸の音。 それを聞いていると段々心が落ち着いてくる。 ……こうしていると、もう大丈夫。 お兄ちゃんのそばにいると、それだけでこわくなくなる。 恋したって強くなんかなれないって思っていたけれど。 あなたのそばにいると、いつも不思議な力をくれる。 あなただけにもらえる力があるんだ。 きっと、ずっと昔から……。
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