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しばらくして。
落ち着いた私はお兄ちゃんから身体を離す。
お兄ちゃんは「ちょっとごめんな」と言い、スマホでどこかに連絡し始めた。
それをすぐに終えると、私に向き直る。
「……桜。保健室にいくぞ。膝から血が出てる」
「え、あ……本当だ。転けたときかな……」
床のささくれか何かで切ったのかもしれない。
全然大した傷じゃないから保健室は大袈裟だと思ったけど、お兄ちゃんの顔は真剣だった。
「……あ、でも演劇部……」
「それは今連絡した。浅間と、……それから二年の児玉にも」
「え………」
浅間先輩はともかく、児玉先輩も?
一体いつの間に知り合いになったのだろう。
……というか。
冷静に考えてみたら、どうしてお兄ちゃんはここに来てくれたのだろう。
私は何も相談していなかったのに。
わからないことだらけの私の疑問を察したのか。
お兄ちゃんが簡単に説明してくれた。
私が演劇部に来ないから浅間先輩が心配していたこと。
児玉先輩と手分けして私を探しにきたこと。
そして……
美作先輩のこと。
「……実はオレ、美作を知ってる。そんな詳しくじゃねえけど。美作は昔、上級生に怪我させたことがあって問題になったから。
お前にちょっかいかけてるってのを聞いてから、少し……その、心配だったよ」
「………そう…だったんだ……」
そもそも。
今日、私にここに来るように言ったのは美作先輩。
どうしてこんなことをしたのかはわからないけれど。
美作先輩は、やっぱり何か裏がある……ということだろうか。
でも、一体どんな……?
「まあ、児玉がなんか思うとこがあるみたいだし、このままほったらかしにはならねえだろうけどな」
「児玉先輩、美作先輩の幼なじみって言ってた……」
「ふーん……、そっか。
とりあえず……いま、演劇部には美作がいる。お前もすぐにアイツに会うのはつらいだろう。ちょっと保健室で頭冷やして行こうぜ」
お兄ちゃんはそう言うと、私の手を取り、引いた。
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