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そのまま手を繋ぎ、廊下に出る。
こうしていると、子供のころ、手を繋いで歩いていたときみたいだ。
いつも半歩先を歩くお兄ちゃんは、私の手を引くように歩いていた。
今、あの頃と同じように
私たちは学校を歩く。
半歩先を行くお兄ちゃんを私は追いかける。
手を繋いだままで。
「……お兄ちゃん」
「なんだよ」
お兄ちゃんは振り向かない。
でも、呼び掛けるといつもちゃんと応えてくれる。
怒っているときも、意地悪なときも。
短かったり、そっけなかったりする返事だけれど。
私の声を無視することはない。
「……さ、さっき栗原先輩に、私と付き合ってるって……」
「ああ。……そう言えばおさまるかと思って。
……栗原は……なんていうか、三年の中では有名で……いろんな相手と付き合って遊んでるというか。まあ、軽い付き合いが好きなタイプなんだよ。
だから、人の彼女みたいな面倒なのは嫌がるらしいから」
お兄ちゃんは少し言いづらそうに口ごもる。
栗原先輩……そうだったんだ……。
いわゆるプレイボーイってやつだろうか。
ありえないことだけど。
もし、始めに告白されたときに付き合っていたら、大変なことになっていたかもしれない。
「……悪かったな」
「え……」
「勝手なこと言って」
「ううん……そんな……」
そんなことない。
あれは私を助けようとして言ったことだし。
それに……
「わ、私……は、嬉しかったよ」
「………桜」
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