いびつな、be with you

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「だって、だって……私……。 私……好きだから、お兄ちゃんのこと……大好きだから」 私は繋がれた手を強く握った。 強く、強く、気持ちが伝わるように。 ああ。 何言っているんだろう。 こんなときに。こんな場所で。 でももう止まらない。 こぼれだした言葉は勢いをつけ、どんどん溢れていく。 本当はもうずっと溢れだしそうだった。 さっき、あなたが助けにきてくれたときから。 気持ちが溢れて、こぼれだして、止まらなかったんだ。 「お兄ちゃんと付き合いたいって……彼女になりたいって、そばにいたいって…… いつも、いつも思ってるんだもん……っ」 「………」 お兄ちゃんが 足を止めた。 「お兄ちゃん……?」 私もつられて立ち止まった。 お兄ちゃんはゆっくり振り返る。 放課後の廊下。 部活の歓声が遠くに響く。 少し薄暗い北校舎に窓からの光が差し込み、辺りは仄明るい。 空気がキラキラ光っていた。 お兄ちゃんはそんな輝く空気に照らされ、私を真っ直ぐに見ていた。 「……わかった」 「え……?」 繋いだままの手。 小さい頃みたいに。 あの頃。 よく手を繋いで一緒に歩いた。 「桜……」 でも、あの頃 あなたの手はこんなに大きくなかった。 背もこんなに高くなかった。 声もいつの間にか低くなっていた。 「付き合おうか」 「え、お兄ちゃん……」 変わっていた。 いつからか。 どこからか。 「オレたち……付き合おう」 私たち 変わっていたんだ。
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